『国鉄』感想

はじめに

今回は本を読んだので、そのエントリーです。

書店で次の本を見つけて買いました。

 

誰に話すタイミングもあまりないので、僕の個人的に面白いと思った経験とともに。簡単に読んで思ったことを書いてみたいと思います。

僕とJRの関係

僕は現在鉄道関係には従事していません。ただ、この本に興味を持ったのは、僕の新卒就活時代のインターンの経験が深く関係しています。

僕は、インターン先で次の2社を見たことがあります。

  • 鉄道総研(鉄道総合技術研究所)のインターン
  • JRの孫会社のインターン

まずは、その辺の話から出来たらと思います。

鉄道総研の経験(インターン)

鉄道総合技術研究所(以下:鉄道総研)という組織をご存知でしょうか?

僕は新卒時代、リクナビで適当に見つけてその存在を知りました。

鉄道総研は本部が東京都国立市にある、世にも珍しい鉄道の研究所です。

元は国鉄時代の研究機関です。国鉄分割のタイミングで研究機関だけ公益財団法人という形で分社され、現在はJR各社の寄付金で運営されている組織です。国鉄はもともと鉄道省の管轄で国のモノでした。なので、今では遠い昔ですが、鉄道総研もややお役所的な雰囲気と気位を感じたのを覚えています。

建付けとしては、日本の鉄道に関連する研究を行う組織ということです。しかし、高速鉄道開発の為に組織されたと考えられます。その背景から、主に新幹線に寄せた要素研究が目立つ研究所でした。

鉄道は、機械工学と電気工学の融合分野です。試験設備も大がかりなものとなり、あまり目にしない試験装置が多くあります。似たような研究所は僕の知る限りあまり存在しません。強いて言うなら、類似建付けの電力中央研究所(通称:電中研)というものがあります。気位は電中研も鉄道総研も似た感じを覚えました。しかし、電中研は、元は事業家の松永安左エ門が立てたものです。なので、若干お役所的な雰囲気とは違うのかと思うところもありました。

鉄道総研では、主にパンタグラフの研究を見せてもらいました。下図に示しますが、電車の上にあるビヨンビヨン跳ねるものです。これで架線から流れる大電流を集電して、モータなどを駆動します。これが電車の原理です。

どうやら、こいつが騒音の問題になるらしく、形状を検討する必要があるとか。そのために、モデルを作って、風洞試験場で騒音実験をするらしいです。

鉄道総研では、滋賀県の米原市にその風洞試験設備があり、そちらで圧力計をつけて、パンタグラフにかかる圧力測定と騒音性能の評価をしました。

(鉄道総研:ホームページより。)

結局は大きな扇風機なんですが。この時、鉄道はめんどくさいんだなと感じたのを覚えています。

なかなか楽しい施設だったのですが、そこでややエリート的で官僚的な雰囲気を感じたのを覚えています。中の人は結構自由ですが、やっぱり硬直的な雰囲気は拭い去れない感じを受けました。

JRの孫会社の経験(インターン)

もう1つ行ったのはJRの孫会社です。詳しくは述べませんが、在来線のメンテナンス工場に5日間行きました。そこでは、『JRって名前を入れてからインターン生が来るようになったんだよ。』と言われて、社会の厳しさを感じたのを覚えています。(笑)

JRは子会社でメンテナンス工場を保有しています。そこでは、日々稼働する鉄道を修理、修繕、清掃します。いわゆる3K現場(臭い、汚い、危険)でした。インターンということですが、オフィスワークのおままごとではなく、重たいインパクトを持たされて1週間。現場作業者の方と汗と煤まみれになりながら、鉄道の修繕を行いました。終わったら次の感じです。

(HP:某ブログより)

スーツで出勤して、煤だらけで帰るわけにはいかないので、中に大浴場が備え付けられていました。風呂に入ってから、へとへとで帰る。そんな職場でした。

先ほどの鉄道総研と違い、そこは孫会社でした。なので、組織的に大手の方が社長など天下り的に来て、上の職位につかれるのを見ました。現場の指導員の方も『新卒は大手に行け!!』というほどで、若干のやっかみはあったのではないかと感じます。新規開発などに、現場は否定的な印象でした。僕も現場を見て思いましたが、日々の重労働をこなす中、できるかどうか分からない新技術に金を出してるのを受け入れる余裕など、現場にあるわけないよなとも思いました。だって3K職場なんだもん。

2つ経験しての僕のJR(旧国鉄)への印象

そんな2つのインターンを経験して、鉄道って巨大でまじめで、どこか閉塞感のある組織だと感じました。これが官僚的と表現するのかは分かりません。ただ、大型設備と汚い現場を回す都合上、なかなか簡単に失敗して学べばいいじゃんってノリは出来ないんだと感じました。だって失敗したら人が死ぬんだもん。

話は戻って『国鉄』を読んでびっくりしたこと

話は戻って『国鉄』を読んでびっくりしたこと。そして、僕が感じた閉塞感のヒントがありました。

それは以下です。

鉄道の賃金は、日本国有鉄道運賃法という法律のもと賃上げがしにくい業界だった。

日本国有鉄道運賃法で起こったと思うこと

日本国有鉄道運賃法があるために、国鉄は運賃値上げがしにくい構造だったようです。また、公益に資するという観点から、賃上げは基本的にかなわない業界のようでした。

つまり、売上は固定だったのです。売上は以下の式で考えられると思います。

売上=運賃×乗車回数

だから利益は当たり前ですが、大体以下で考えられます。

利益=売上-固定費

乗車回数は多分人口に依存します。国の全土に路線を引いたら、乗車回数の変化は基本見込めません。つまり、賃金を日本国有鉄道運賃法で固定させると、利益はそもそも出ない構造になっていると考えられます。

鉄道はとても大きな固定費がかかるビジネスです。減価償却の概念は鉄道から生まれたというほど、設備投資にお金がかかる設備産業です。この固定費。多分一定ではありません。インフレの時は固定費は膨れ上がるビジネスです。

国鉄のビジネスは利益が上がりにくいビジネスだった。

その時日本のインフレ率(物価)は?

参考までに日本のインフレ率を見てみます。

(某HPより)

データの信憑性の議論はおいておきますが、上を見ると国鉄解体までの1980年末までは、5%以上の高インフレ状態が続いていたと考えられます。要は固定費は上がり続けていたんじゃないか考えられます。

国鉄時代(1980年末)は高インフレが続いていた。

上記からまとめると…?

国鉄時代は、固定費がインフレにより上がり続けており、利益を圧迫し続けたと予想できます。運賃は公益に資する精神から固定。国民の為に人・モノを投入しましたが、今でも残るどことない閉塞感は、この利益が出ない構造にあったのではないか?そう感じざるを得ませんでした。

僕の感じた閉塞感はそのような業態構造の中にあったのではないか?そんなことを感じずにはいられませんでした。

最後に

最後に。この本を読んでて一つ面白かったことを添えて、終わりの文章とします。当時新幹線開発は、否定派が多かったという記述です。『万里の長城・ピラミッド・戦艦大和』の三バカになぞらえられるほど、新幹線開発の評判は良くなかったようです。

今では、JR東海のドル箱となり、売上や利益の黒字はJR東海が多く持っています。それは、当時の否定論からは想像がつかなかったことなのだと思います。

僕も似たようなことで『daiチャリ』の例が思い出されました。1年前説明会で聞いたときは、『チャリンコをシェアして何が街をアップデートだ。バカじゃないのか?』くらい思っていました。でも、とあるタイミングで使ってみたら、意外と便利でした。創造のつかないことは否定から入ってしまう。そんなことを最近でも反省したものでした。

そう考えると現場で否定されていたリニアの開発も案外出来たらみんな乗ったりするのかもしれない。そんなことを思った次第です。

昨今は、鉄道をはじめ、インフラ業界が就活では人気なようです。理由は安定だからということ。先の話でも、鉄道業界を例にとると、インフラ業界はインフレに弱い業界です。逆に言うとデフレには強い業界とみることが出来ます。昨今のインフラ人気は、日本のそういった30年間のデフレの象徴なのかもしれないと感じられます。

インフラはとても大事です。しかし、インフラが威張る世界は健全ではないのかもしれません。

鉄道
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イチゴ大福

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